Bb Beauty Knowledge #10
2024.3.27
「エイジングケア」という言葉はよく耳にするものの、実際には、いつから、何をすればいいのかよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
エイジングケアにまつわる基礎知識から具体的なケア方法、日常生活のポイントまで、美容皮膚科医の本多釈人先生に詳しく教えていただきました。
エイジングケアを始めるにあたり、肌の変化や、肌に現れるエイジングサインについて理解することが大切です。シワやシミといったエイジングサインは見ため年齢に大きな影響を与えますが、中でも見た目年齢を左右するのは次の3つです。
①シワ
②たるみ
③シミ・くすみなどの色ムラ
「『肌の曲がり角』といわれる20代後半から30代前半にかけて、この3大エイジングサインがあらわれるようになります」(本多先生)
肌にエイジングサインが出てくるということは、体内の細胞老化が始まっている合図。エイジングサインは、年代によってもあらわれ方や進行具合が異なります。
30代になると皮脂量が減り、乾燥や小じわ、毛穴の目立ちなどが気になり始めます。
「蓄積した紫外線ダメージによるシミや、ホルモンバランスの変化による肝斑が出始める方もいます。大きな肌トラブルがいきなり起きるというより、些細な不調が徐々に増える年代といえるでしょう」(本多先生)
40代になると水分や皮脂、肌のハリや弾力を支える真皮(肌の奥の層)のコラーゲンが減少し、シワやたるみができやすい状態に。
「顔だけでなく、首のシワなどが目立ち始める方もいます」(本多先生)
50代を過ぎると脂肪だけでなく骨や筋肉も痩せ、ほうれい線などの深いしわやたるみが増えていきます。
「ターンオーバーも若いころに比べて倍ほどに長くなるため、くすみも簡単には改善しません。髪のハリやツヤ、ボリュームの低下も顕著になります」(本多先生)
美容医療などとは違い、化粧品を用いたスキンケアでできるのは、肌トラブルを「予防」するところまで。しかしエイジングケアにおいては、この「予防」が何よりも重要だと本多先生は話します。
「5年後、10年後の肌をどれだけよい状態でキープできるかは、いま行っているエイジングケアにかかっています。予防の観点からみると、20代後半にはエイジングケアを始めていただきたいですね」(本多先生)
まさに、美は1日にしてならず。未来の肌のためにも、エイジングケアは早めに始めるのがよいでしょう。ただし、ストレスを溜めずに続けることが大切です。
「スキンケアにのめり込みすぎてもいい結果は出ません。いつものステップを少し省略するなど、ときには上手にさぼることが継続のコツです」(本多先生)
化粧品の役割は肌トラブルの「予防」であることを考えても、エイジングサインが現れる前からケアを始めたいもの。では、何を機に始めれば良いのでしょうか。
「毎日、肌の調子を確認する習慣をつけましょう。そうして肌を見たり触れたりして観察していると、化粧ノリが悪くなった、愛用していたスキンケアが合わなくなった、肌触りが悪くなった…などのちょっとした違和感に気づけると思います。そうした肌の変化を感じたら、エイジングケアのはじめどきです」(本多先生)
ここからは、エイジングケアを意識した具体的なスキンケアの方法をご紹介します。
肌に付着した汚れやメイクをきちんと落とすことからエイジングケアが始まります。汚れをきちんと落とすことで、その後に使うスキンケアの効果をしっかり発揮することができます。ステップとしては、クレンジングの後に洗顔を行う、W洗顔が基本です。
POINT:朝と晩、どちらも洗顔料を使う
洗顔料は朝と夜、どちらも使用します。肌が乾燥しやすい方は、マイルドな洗浄力のものを選びましょう。
「夜に美容効果や保湿力が高い製品を使うことが多いので、朝は夜に塗ったものを洗顔料で落としてリセットする必要があります」(本多先生)
POINT:クレンジングで油分をオフ
「水と油は反発するので、油性成分を多く含んだメイク用品が付着したままの肌に化粧水は浸透していきません。皮脂やメイクは、クレンジングを使って落としましょう。日焼け止めのみの日でもクレンジングの使用をおすすめします」(本多先生)
メイクが軽めならミルク、しっかりめならオイルなど、メイクの濃さに合わせてクレンジング料の種類を使い分けることも大切です。洗浄力の高いクレンジングは乾燥しそうで不安に思う方もいるかもしれませんが、その後に保湿すれば問題ありません。
「洗浄による乾燥に敏感になりすぎなくても大丈夫。タオルドライの後、すみやかにスキンケアに取り掛かる習慣をつけることが大切です」(本多先生)
汚れを落とした後は、しっかりと保湿をしましょう。
「保湿を怠ると、日焼け止めの効果を得にくくなったり、積極的なケアをしにくくなったりと、全てがうまくいかなくなるといっても過言ではありません」(本多先生)
保水をするための化粧水は、肌質を問わず使ってほしい基本のアイテムです。化粧水の後は、乳液とクリームを使用します。この3品を基本として、そこから肌質に合わせて使用量や使う部位をカスタマイズしていきましょう。
べたつきが気になる脂性肌や混合肌の方でも、乳液やクリームをやみくもに省くのはよくありません。Tゾーンなど皮脂の多いところは薄く塗布するなど、適切に調整していくことが大切です。
「自分の顔のどこにどれぐらいの油分があるのか、皮膚の厚さに違いがあるのかなどを可視化する「顔の地図」をつくることをおすすめしています。基礎化粧品を選びやすくなり、塗布する部位や量もカスタムしやすくなります」(本多先生)
さらに上のエイジングケアをしたいなら、基本の3品に加えて美容液をプラスするのがおすすめだと話す本多先生。
「美容液には、エイジング悩みにアプローチできる成分が高濃度で配合されていることが多く、高い効果が期待できます」
朝と夜で違うものを使ったり、導入美容液を取り入れたりと、カスタマイズ性が高いところも美容液の魅力。さらに、自分の肌悩みやなりたい肌のイメージに合った成分や処方のものを選べるとよいでしょう。エイジングサインにアプローチできる成分などを調べてみるのもおすすめです。
どんな製品を選んでいいかわからないという方に向けて、エイジングケア化粧品を選ぶうえでのポイントを3つ、本多先生に教えていただきました。
「シワ改善や美白(シミ予防)など、エイジングサインに対する有効成分が配合された医薬部外品から選択するのもひとつです」(本多先生)
成分表示の欄に「有効成分」の記載があるか、パッケージに「薬用」という表記があるかなどをチェックしてみましょう。
プチプラでもいいのか、高いものの方が効果があるのかという点においては、「研究力に強みがあったり企業規模が大きかったりすれば、プチプラでも高品質な製品を販売することができるため、値段が安い=効果がないとは言い切れません。」と本多先生。
しかし、高い製品には理由があるのも事実だといいます。
「高価な製品には、その分研究の手間やコストなどが多くかかっていることがほとんど。そのバランスを考えると、値段と効果の高さはニアリーイコールといえるでしょう」(本多先生)
どのメーカーにもそれぞれの強みがあるため一概には言えませんが、プチプラから選ぶ場合は、高級ラインも展開している大手メーカーのプチプララインから選ぶのもひとつの手です。
エイジングケアをこれから始める方には、目的が明確に設定されており、順番や使い方がわかりやすいライン使いがおすすめです。
ライン使いを試した後は、同じメーカーの異なるラインの製品を組み合わせることにチャレンジしてみましょう。同じメーカーであれば肌に合わないというリスクが低いと考えられるためです。
「成分配合、濃度、効果の仕組みなどを理解し、異なるメーカーの製品を肌の状態に応じて組み合わせられるようになったらさらに上級者です」(本多先生)
徐々にレベルを上げて、上級者を目指しましょう。
せっかくよい製品を使っても、なんとなく使用していたり、間違った使い方をしていると効果を感じることができません。エイジングケアにもかかわる、スキンケアの意外な落とし穴について教えていただきました。
「肌を擦ってはいけないと意識しすぎるために、適切なケアができないケースもある」と本多先生。控えるべきは肌が引っ張られて動くような「こする」動作であり、肌の表面だけを「撫でる」ような動きであれば問題ありません。
摩擦を恐れて、本来すべきケアが疎かにならないように気を付けましょう。
化粧品の効果は、記載されている推奨量を使ってはじめて実感できるように設計されています。多すぎ・少なすぎにならないよう、適切な量をきちんと使用しましょう。
「皮脂が多い場合でも部位ごとに調節するなど、むやみに量を減らさないように気をつけましょう」(本多先生)
エイジングケアにおいては、スキンケアだけでなく生活習慣の見直しも大切です。食事・運動・睡眠の3点について、本多先生に伺いました。
「栄養バランスのとれた食事が基本」と本多先生。そのうえで、積極的に取り入れるとよい栄養素を教えていただきました。
・ビタミンA・C・E:活性酸素を抑え、免疫力を高める
・ビタミンB群:粘膜や皮膚の炎症を抑える
・鉄分:コラーゲン生成に関わる赤血球をつくり出す
・ポリフェノール、リコピン:活性酸素を抑える
・亜鉛:髪の成長を促す
一方で控えたほうがよいのは、ホルモンバランスの乱れ・黄ぐすみやたるみの一因になる加工食品や加工肉。脂質の“質”を意識することも大切です。
「シソ油・エゴマ油など、オメガ3系の良質な油が理想的です。オメガ3には体内の炎症抑制の効果があるとされ、エイジングケアにも有効です」(本多先生)
肌に栄養をしっかり届けるためにも、3食欠かさずにとることも重要なポイント。食事のボリュームは、朝しっかり、昼そこそこ、夜あっさりがおすすめです。
本多先生いわく、加齢とともに衰える筋肉を鍛えることも立派なエイジングケアになるのだそう。
「血行促進によってターンオーバーが活性化したり、腸の動きがよくなり肌荒れ解消につながったりと、肌にもいいことづくめです」(本多先生)
ただし息切れをするほど高強度の運動は、ストレスがかかってしまうのでほどほどに。大きい筋肉が集まる下半身を適度に鍛えることができる、軽いジョギング・ウォーキングなどがおすすめです。
「1日20分ほど行うのが理想ですが、難しいときは1駅分歩く・階段を使う・電車で座らずに立つなど、日常生活でのちょっとしたアクションを加えるだけでも十分です」(本多先生)
睡眠中には肌の回復が促されるので、睡眠時間をしっかり確保することが大切。
「適切な睡眠時間には個人差がありますが、できれば7~8時間は確保したいところです。時間だけではなく、質のよい睡眠をとる工夫を取り入れましょう」(本多先生)
本多先生に教えていただいた、身体を覚醒させてしまう行動の例は次の通り。寝る4時間ほど前から控えるようにしましょう。
・ブルーライトを浴びる(スマホやPC)
・激しい運動
・しっかりめの食事
・アルコール、カフェインの摂取
・熱いお風呂に入る
エイジングケアを追求するためには、何かひとつに取り組むだけではなく、包括的なケアがとても大事。肌の基盤を底上げするためには、日々のコツコツとしたスキンケアが何よりも大切です。「顔の地図」づくりなど、今回ご紹介したテクニックや知識をぜひ今日から取り入れてみてください。
日々進歩する美容医療の世界で、一人一人の美の価値観に寄り添った医療を提案しながら、産婦人科医・ドラァグクイーンとしての経験も活かし、女性の悩みを解決するお手伝いを行っている。
肌や美容についての話を、メンズという立場から面白く楽しく発信するためにYouTube も配信中。